手取りが10月に減ったら、まず確認すること

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銀行に振り込まれる給与が、10月になって突然減ることがあります。びっくりするかもしれませんが、これにははっきりとした理由があります。

手取りを減らした犯人は?

銀行に振り込まれるお金、いわゆる手取りは給与から社会保険料や税金を差し引いたものです。毎年10月は、一部の社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金保険。以下、社会保険料はこの3つの保険の保険料を指します。)の見直しが反映される時期です。10月に手取りが減っているとしたら、保険料の見直しによってその負担が増えていることが考えられます。

社会保険料の決まり方

社会保険料の見直しはふたつの要素があります。ひとつは社会保険料の保険料率や保険負担割合が変わった時、もうひとつは労働者の標準報酬月額が変わった時です。10月の手取りに影響を与えるのは、労働者の標準報酬月額の変更のほうです。

標準報酬月額

社会保険料は、労働者が得る報酬によって決まります。個々の報酬は適当な範囲で分割され、代表値に置き換えられます。この代表値のことを標準報酬月額と呼びます。標準報酬月額は4月から6月までの報酬月額をもとに年に1度見直されます。一度決めたら、原則1年間は変わりません。新しい標準報酬月額は9月の報酬分から1年間、毎月の社会保険料を計算するときに使われます。その影響を最初に受けるのが、10月に受け取る給与からになるのです。

具体的な標準報酬月額を確認してみましょう。月の報酬が20万円台前後の場合の標準報酬月額です。

報酬月額標準報酬月額
195,000円から210,000円未満200,000円
210,000円から230,000円未満220,000円
230,000円から250,000円未満240,000円
250,000円から270,000円未満260,000円
270,000円から290,000円未満280,000円
290,000円から310,000円未満300,000円

※協会けんぽ2021年4月分から東京都の場合

優秀な働き手は手取りが減る?

標準報酬月額は4月から6月までの報酬月額をもとに決まります。1年前、報酬月額が225,000円だった人が、今年は235,000円に引き上げられていたとします。上の表を見てください。1年前は標準報酬月額は220,000円です。それが今年は240,000円に変わります。このように、報酬が増えると標準報酬月額は更新され、それに応じて社会保険料の負担も大きくなります。では、なぜ10月に手取りが減るのか。時系列で確認しましょう。

まず、ある時点で報酬が増加します。この時、すぐに社会保険料は変わりませんので、あなたの手取りは昇給分増えることになります。しばらくは楽しい時間が過ごせるでしょう。しかし、10月に受け取る給与からは新しい標準報酬月額をもとに社会保険料が計算されます。標準報酬月額のランクが上がっていると社会保険料が増えるため、結果として10月の手取りは9月よりも減ってしまいます。これが10月に手取りが減る原因です。

報酬が増加していなければ、社会保険料が増えることもありません。手取りも同じままです。報酬が増えた優秀な労働者だけが、10月に手取りが減るのです。

昇給前後の社会保険料の比較

昇給前昇給後
標準報酬月額220,000円240,000円
健康保険料10,824円11,808円
介護保険料1,980円2,160円
厚生年金保険料20,130円21,960円
社会保険料合計32,934円35,928円

※協会けんぽ2021年4月分から東京都の場合。保険料は自己負担分。

4月・5月・6月は働きすぎに注意

報酬には基本給のほか残業代などの手当ても含まれます。そのため、基本給は同じでも、残業代などで全体の給与があがっていると、標準報酬月額が変わる可能性があります。

また、4月・5月・6月の残業代がほかの月よりも多くなってしまうと、1年間はそれを基準に社会保険料を支払うことになります。4月・5月・6月の働きすぎには注意が必要です。

執筆者

鈴木玲(ファイナンシャルプランナー/住宅ローンアドバイザー)

出版社、Webメディアで企画・制作を手掛けたのちに、メディアプランナーとして独立。それまで無関心だった社会保険や税金、資産運用に目覚める。主に若年層に対して社会の仕組みやお金の役割について経験をもとに、わかりやすく伝える。

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