分かりやすい文章。(2)日本語に慣れていない人への配慮
簡潔な文章は分かりやすいですが、日本語に慣れていない人への伝え方としては、それだけでは足りません。
・表記の決まり
・禁止事項
・重要な言葉を使うときの決まり
上記3点を行い、分かりやすくて伝わる文章を目指します。
表記の決まり
・文末は「です」「ます」で統一する
・漢字の量に注意し、ふりがなをつける
在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン|2020年8月|出入国在留管理庁、文化庁
表記の決まりとして、まず留意すべきはこのふたつです。漢字の量について具体的に言及しているものもあります。
1文の漢字数
カテゴリーⅠ:3,4字程度
カテゴリーⅡ:13字まで
これさえあれば!「やさしい日本語」作り方 ガイド|2019年3月|弘前大学人文社会科学部社会言語学研究室
「カテゴリーⅠ」とは、災害直後にいち早く情報を伝えるための最低限度の言葉からなるやさしい日本語を、「カテゴリーⅡ」とは、普段の生活情報にも使えるように「カテゴリⅠ」よりはレベルを上げたやさしい日本語のことです。
ルビについては、ふたつの方法が推奨されています。漢字の上に入れる一般的なルビと、漢字の後ろにカッコ書きで読み方を入れる方法です。
●住民税を払います。
●住民税(じゅうみんぜい)を払(はら)います
在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン|2020年8月|出入国在留管理庁、文化庁
禁止事項
やさしい日本語を作るときにやってはいけない禁止事項です。少し気をつけてさえいれば徹底できる4項目をまず意識してください。下記の太字部分です。
二重否定は使わない
(例文)
在留カード以外は必要ありません。
(書き換え例)
在留カードを持ってきてください。
略語は使わない
(例文)
健診は年1回となります。
(書き換え例)
健康診断は1年に1回です。
ローマ字は使わない
在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン|2020年8月|出入国在留管理庁、文化庁
擬態語は、外国人には伝わりにくいので使うのを避けてください
例:ふわふわ、わくわく、サッと
生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン|2017年3月|弘前大学人文社会科学部社会言語学研究室
やさしい日本語を作るときは「できるなら避ける」「多用しない」と言った条件付きで緩やかな禁止事項もあります。これについてはまた別のところで触れることにします。
重要な言葉を使うときの決まり
重要な言葉や固有名詞などで言い換えが難しいときは、その言葉をそのまま使用し、別に説明を加えるようにします。
・余震<=後から来る地震>
・暗証番号<=あなただけが知っている番号>
在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン|2020年8月|出入国在留管理庁、文化庁
・健康保険証<病院で 使う カード>
・確定申告<その年に 払う 税金を 決める 手続き>
生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン|2017年3月|弘前大学人文社会科学部社会言語学研究室
これまでは該当の言葉の直後に「<…>」で表現することが一般的でしたが、文化庁のガイドラインでは「<=…>」と「=」も入れるようになっています。
また、一文中に何度も説明がつくと、文章が読みづらくなってしまいます。こうした場合は、当初の文には説明をつけず、文を言い終えた後に、詳しく説明するスタイルもあります。
(例文)
児童手当<親が ひとりで 子どもを 育てているときに もらうことが できる お金>を もらうために 現居届<お金を もらうため 現在の 状況を 知らせる 紙>を 出して ください。
(言い換え例)
児童手当を もらうために 現居届を 出して ください。
児童手当は 親が ひとりで 子どもを 育てているときに もらうことが できる お金のことです。現況届は お金を もらうため 現在の 状況を 知らせる 紙のことです。
生活情報誌作成のための「やさしい日本語」ガイドライン|2017年3月|弘前大学人文社会科学部社会言語学研究室
説明を言葉の直後につけるか、文を終えてからとするかは作り手の判断に委ねられています。全体のバランスなどを考慮して決定しましょう。